研究報告 2-1

原田 和明(はらだ かずあき)
(社福)大阪手をつなぐ育成会/中部学院大学

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#報告題目

知的・発達・精神障害のある未決拘禁者処遇における,障害者差別解消法の効果についての一考察

#報告キーワード

触法障害者 / 差別的取扱の禁止 / 合理的配慮

#報告要旨

1.研究目的
本研究は、主に知的障害,発達障害,精神障害がある未決拘禁者の処遇について,障害者差別解消法施行による差別的取扱いの禁止や合理的配慮といった効果が及んでいるかを検討し,刑事司法における障害者差別解消法の及ぼす影響を検証する。

2.倫理的配慮
本研究では事例の検討も行っているるが、守秘のため必要最小限の事柄のみを提示し、さらに研究に差し障りが無い程度の加工を施している。

3.本研究における知的障害のある者,発達障害のある者,精神障害のある未決拘禁者の定義
(知的障害のある未決拘禁者の定義)
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ,日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にある被疑者被告人で刑事施設に勾留中の者。なお,鑑定留置中の者を含む。
(発達障害のある者の定義)
注意欠陥多動障害(ADHD及びADD、HDそれぞれの優勢型も含む)、広汎性発達障害(PDD 自閉症、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害)、学習障害(LD)があり、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にある被疑者被告人で刑事施設に勾留中の者。なお,鑑定留置中の者を含む。
(精神障害のある者の定義)
統合失調症,精神作用物質による急性中毒又はその依存症,精神病質その他の精神疾患があり,日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にある被疑者被告人で刑事施設に勾留中の者。なお,鑑定留置中の者を含む。

4.本研究における未決拘禁者の定義
未決拘禁者とは,刑事処分がまだ確定せず,拘置施設や留置施設といった刑事施設にに身柄を拘束されている被疑者・被告人をいう。

5.研究方法
ケーススタディーとして,支援実践を行なった知的障害,発達障害,精神障害のある未決拘禁者の事例について,障害者差別解消法施行前と施行後それぞれ各障害1事例について実践結果やクライエントからの聴取内容を比較検討し,障害者差別解消法施行による未決拘禁者への処遇に効果が及んでいるかを検証する。

6.考察
障害者自立支援法施行後における刑事施設での処遇は,居住環境への配慮,福祉関係者の面会時間などについて,一定配慮がなされている。しかし十分ではない。障害に応じた個別的な対応はなされておらず,また,矯正施設と異なり福祉専門職の配置もなく,十分なものとは言えない。刑事施設における処遇についての公開がなされておらず不明確である。また,被疑者については,刑事施設での処遇だけではなく,取調時における差別的取扱いの禁止や合理的配慮について不明確である.

7.本研究の継続的課題
本研究においては障害者差別解消施行後の事例が少なく多面的な考察ができていない。今後,多くの事例で比較検討を継続する必要がある。

参考文献
加藤博史、水藤昌彦 編著「司法福祉を学ぶ」ミネルヴァ書房、2013
刑事立法研究会編 「非拘禁的措置と社会内処遇の課題と展望」現代人文社、2012
浜井浩一、村井敏邦編著「発達障害と司法 龍谷大学矯正・保護研究センター叢書第11号」現代人文社、2010
藤原正範、古川隆司 編著「司法福祉」法律文化社、2013