研究報告 3-1

吉村 千恵 (よしむら ちえ)
特定非営利活動法人自立生活センター ヒューマンネットワーク熊本 研究員

権藤 眞由美 (ごんどう まゆみ)
立命館大学大学院先端総合学術研究科公共領域7回生

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#報告題目

「「福祉避難所」における障害者への支援――熊本地震からみえたもの」)

#報告キーワード

福祉避難所 / 障害者 / 熊本地震

#報告要旨

1. 目的

本報告では、2016年4月14日21時26分(前震)、翌々日4月16日1時25分(本震)に熊本県熊本地方において気象庁震度階級では最も大きい震度7を観測する地震が起きた際に、「福祉避難所」がどのように機能したのか、また避難者は、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病者等、限定された人たちを対象とした避難所であったのか。さらに東日本大震災では、「福祉避難所」が、介護の必要な高齢者・障害者だけを集めてひとところに収容する施設と化してしまっていた。しかし、熊本地震では運営する「福祉避難所」によって一様ではなかった対象者とその取り組みを検証することを目的とする。

2. 方法

本報告は、文献調査とフィールドワーク調査及びインタビュー調査をもとにしている。文献調査では、「福祉避難所」に関する提言や研究が活かされた事例を取り上げ障害者の避難を実現可能とした取り組みを分析する。インタビュー調査では、熊本県内で障害者の避難を受け入れた「福祉避難所」に指定された施設へ出向き、受け入れ時の状況と「福祉避難所」運営に関して考察を試みる。
本報告に関する調査の目的や概要及び、個人情報や調査結果の取り扱い、学術報告としての公開に関しては「調査の概要」もって調査対象者に説明し、同意を得た方のみを調査対象者とする。個人情報保護について調査の内容および規模を考慮した適切な個人情報の収集、利用および提供を定めた立命館大学研究倫理指針に基づき、人権の保護及び法令の遵守を厳正に行い報告の際は、対象者の氏名を匿名化した形で報告する。

3. 「福祉避難所」の周知

今回の地震で、「福祉避難所」に指定されていた施設が「協定は結んでいたが具体的なイメージがなかった」と話していた施設もある。。また、「福祉避難所」が何処にあるのか、さらに障害を持った人がそこに本当に避難できるのか、介助は提供してもらえるのか、東日本大震災であがっていた「福祉避難所」の周知やその役割は、熊本の地でもできていなかったことが明らかになった。これは、熊本地震を経験したひとたちに残った課題のひとつでもある。

4. 「福祉避難所」へ避難するということ
現存の施設を「福祉避難所」として協定は結んでいるものの、実際にはそこで働く職員も被災者であり自らの生活や現場の対応で二次的な避難所となる「福祉避難所」としての役割まで追い付かなかった施設もある。しかしながら、インタビュー調査を行う中で退職した元職員がかけつけてくれたり、職員の家族が支援の場面に携わったことで「福祉避難所」としての機能を可能にさせた施設もあった。日頃から余裕のない人員でまわしている施設が多数を占めている。避難できる「場所」は提供できるが「福祉避難所」として障害者を受けれるには家族同伴、もしくは介助の担い手なくしては難しかったことが明らかとなった。

5. 考察
当日、会場にて報告する。

【参考・引用文献】
青木千帆子・権藤眞由美,2011「「福祉避難所」成立の経緯」2011年障害学会.
天田城介・渡辺克典編,2015『大震災の生存学』青弓社.
大阪市,2010『緊急雇用創出基金事業 福祉避難所計画策定のための調査 報告書』特定非営利活動法人 ゆめ風基金.
大阪事務局 認定NPO法人ゆめ風基金,2017『SOSにこたえたい!―熊本地震障害者救援本部2016~2017年報告冊子』熊本地震障害者救援本部
河野秀忠,2012『障害者問題総合誌 そよ風のように街に出よう82』関西障害者定期刊行物協会.
障害学会,2012『障害学研究8』明石書店.
認定NPO法人 ゆめ風基金,2013『障害者市民防災提言集 東日本大災害版』関西障害者定期刊行物協会.
山田昭義・水谷真2011「障害者は避難所に避難できない」『現代思想Vol.39‐7』青土社.