ポスター報告 18

山田 舜也 (やまだ しゅんや)
東京大学大学院福島研究室・東大スタタリング代表・埼玉言友会

#報告題目

吃音の当事者研究 / 二重スパイの吃音者

#報告キーワード

吃音 / 当事者研究 / 演技

#報告要旨

 吃音者の自助グループを運営し、当事者研究の活動を続けてきた発表者自身が内省的に行った当事者研究の成果を発表する。

 これまで、吃音についての取り組みは、医療面においても自助活動面においても、「どもる」という言語症状をどう改善するか、あるいは、「どもる」ことに対する当事者の認知や感情をどう修正するか、といった、「どもる」という言語症状を中心にアプローチがなされてきた。
 これに対し、発表者は、「どもっていないときでも、吃音者であることを意識することがある」などの経験や、隠れ吃音の問題に注目し、「吃音の本体を『どもること』と定義しない」という前提を出発点におき、自分自身の吃音に関する体験についての内省的な当事者研究を行った。そして、発表者自身が吃音当事者として体験する生きづらさの内容を、「どもることの問題」や「どもることへの認知や感情の問題」ではなく、「話し言葉の選択先が限られること」として解釈しなおした。また、吃音症状の状況依存性や時期的変動の問題に注目し、「話し言葉の選択先が限られること」によって「吃音の<場所>が、当事者の内部で<移動>すること」の中に、「吃音の有意味性」を感じ取っているのではないか、と考えた。そして、このことによって生まれる吃音者としての実存的問題に、『二重スパイ』という自己病名をつけた。
 「演じること」と「吃音」についての、あらたな解釈枠組みを発表する。

 なお、本研究では発表者の内省的考察の他、他の吃音者との当事者研究も行うため、倫理面での問題にも十分留意した。具体的には発表者が所属する機関の倫理委員会の承認、当事者研究各参加者の同意の取得、匿名化など個人情報の管理、などである。