takuya maeda - sociology
前田拓也(社会学)の研究 / 仕事 / 業績など
misc
- 前田拓也, 20121203, 「介護」「介助」
- 『現代社会学事典』弘文堂, p51. [項目執筆]
A5判上製
1640頁
¥19,000+税
9784335551482
[版元] [amazon]
- 本文
- 介護 かいご([英] care)
(※以下は校正前の段階のものです)
人びとの身体に他者が直接的または間接的にはたらきかけることを通して、社会生活を十全に営むことのできる状態とするべくアシストする行為と関係のことであり、また、その相互行為のプロセスそのものを指す。「ケア」の語と互換的に用いられる場合もあるが、そのサブカテゴリーとして用いられる場合には、対象として高齢者または障害者が想定されていることが多い。いわゆる「医療行為」との境界は常に政治的イシューであり続けているが、一般的には、食事、排泄、起居などの日常生活動作(身辺介護)のほか、家事全般(家事援助)、外出(ガイドヘルプ)などが含まれる。また、他者とのコミュニケーションそれ自体に他者のアシストが必要な場合や、必要な介護内容があらかじめ設定できないものの、しかし必要とされたときには即座に対応せねばならない場合などには、日常的な行動を「見守る」こと自体もまた介護でありうる(見守り介護)。
日本ではおもに近代家族制度のもと、介護を担う主体として家族(特に女性)が期待されてきた。しかし、少子化、人口の高齢化による家族機能の縮小にともない、家族を典型とする私的な人間関係を介護の供給源とすることが困難となりつつある現実をうけて、介護を社会全体で公的に分担/負担し、供給すること、すなわち「介護の社会化」が議論されはじめた。
国の制度としては1963年にホームヘルパー(家庭奉仕員)が老人福祉法に位置づけられ、その活動は家事援助を中心とした職種とされてきたが、1987年には国家資格をもつ専門職としての介護福祉士が誕生。2000年には介護保険制度が開始され、「介護の社会化」を推し進める制度として期待された。
障害をもつ当事者たちによる公的介護保障を要求する運動は1970年代にはじまり、国、自治体に介護サービスの充実を要求し、少しずつ制度を獲得していった(従来からのホームヘルパーに加え、生活保護他人介護加算、各自治体の全身性障害者介護人派遣事業、自薦の介助者をホームヘルパーとして登録し利用する方式など)。また、地域生活を障害者自らが中心になって支援する「自立生活センター」(CIL)の全国的な展開など、さまざまなかたちで障害者の地域生活を実現していく過程にある。2003年には「措置から契約へ」の流れのもと支援費制度施行。2006年には障害者自立支援法へ移行し、障害者の福祉サービスを一元化するとともに、障害者に費用の原則1割負担を求められるようになった。
[主要文献]
安積純子・尾中文哉・岡原正幸・立岩真也『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』藤原書店, 1995 (増補・改訂版)
春日キスヨ『介護問題の社会学』岩波書店, 2001
渡邉琢『介助者たちは、どう生きていくのか――障害者の地域自立生活と介助という営み』生活書院, 2011
- 介助 かいじょ([英] care)
(※以下は校正前の段階のものです)
基本的な意味内容は「介護」の項に同じ。
ただし、介護という語、特に介「護」の文字のもつ「保護/庇護」のニュアンスを退けるため、(特に障害者運動の文脈で)おもに障害をもつ当事者たちによってしばしば自覚的に用いられてきた。こうした用法を通して問題化されてきたのは、介護する者による介護される者へのパターナリズムと、両者の非対称な関係性である。
介護者はときに、意図的か否かにかかわらず、介護される障害者の意志や主体性に干渉・介入したり、障害者を一方的に介護を受け取る受動的存在として位置づけたりしてしまう。それゆえ、障害者が自己の選択や決定にもとづいて「自立」した生活を組み立てるにあたっては、それをアシストする立場の者はあくまでも障害者の決定を「補助/手助け」するためにはたらきかける存在として捉える必要があるとされる。
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