障害スコアの数値と信頼性に関する予備的考察 障害の重度性の測定に向けた試み 榊原賢二郎 sakakibara_kenjirou@yahoo.co.jp 平成29年10月28日 障害学会大会報告 【以下スライド12枚】 ◆スライド1: 前回大会報告の概要 ・障害の重度性の再定式化 ……社会的排除の重度性として cf. [UPIAS and DA][星加][榊原] ・障害―排除の重度性の二つの測り方 ―客観的方法: 実際の状況に着目 ―主観的方法: 人々の考えに着目 今回は後者……「障害スコア」 ◆スライド2: 障害スコア測定の目的と対象 人々の認識・態度を通じて障害―排除を巡る社会構造を探求 ≠【ノットイコール】運動・質的調査から見える「社会」 ・当事者・家族・福祉系教職員 ・省庁・企業の「責任者」や専門家等 闘争=ふれあい[横田]の圏外も射程 ◆スライド3: 予備的調査の概要 名称: 社会参加と身体についての意 識調査 期間: 2017年5月26日〜30日 方法: インターネット調査    (NTTコムオンラインに委託) 対象: モニター(登録済回答者) 有効回答: 224名 ◆スライド4: 回答者の属性(N=224) 性別: 男性63.8% 年齢: 53.4±【プラスマイナス】12.5 大きなけが・病気: 経験あり28.1% 健康(1=良、5=悪): 2.39±【プラスマイナス】1.04 学歴: 中等32.6%、高等64.3% 税引前世帯年収: 582±【プラスマイナス】347万円 (200万円刻みの選択肢) ◆スライド5: 質問内容 Q. 以下の表に並んでいるのは、心や体の状態です。この中には、仕事や学校生活、結婚や家事・育児などといった社会生活で不利になるものもあるようです。 以下の心や体の状態は、どの程度社会生活に不利になると思いますか。 ◆スライド6: 回答と集計方法 回答者は1から6までの間で選択 1=まったく不利にならない 6=非常に不利になる 1〜6を0,20,40,...,100と変換 平均=障害スコア(0〜100) 結果: 90台から30台まで分布 ⇒不利の程度は異なるという評価 ◆スライド7から9: 障害スコア 【31行4列の表。 1列目: 身体的条件 2列目: 平均(障害スコア) 3列目: 個別の回答の標準偏差 4列目: 障害スコアの標準偏差の推定値】 目が見えず耳が聞こえない 90.8 24.6 1.64 目が見えない 88.7 24.1 1.61 耳が聞こえない 83.5 25.3 1.69 手が動かない 81.1 26.6 1.77 言葉を理解できない 80.9 26.3 1.76 歩けない 80.0 28.2 1.89 言葉を話せない 79.1 27.9 1.86 新しいことを覚えられない 73.7 26.1 1.74 移動に車椅子を使う 72.2 28.9 1.93 幻覚や妄想がある 71.2 29.6 1.98 文字は見えるが読めない 68.1 28.3 1.89 色が見分けられない 67.2 27.7 1.85 他人と会うのが怖い 67.1 29.4 1.96 片目が見えない 66.6 26.1 1.74 なめらかに話せず言葉を繰返す 63.1 27.6 1.85 においを感じない 60.8 29.3 1.96 味を感じない 60.6 29.6 1.98 他人の気持ちが全く分からない 60.2 29.4 1.96 じっとしていられない 58.8 27.8 1.86 腰が痛く座っていられない 58.3 29.0 1.93 いつも体中が痛い 57.7 29.1 1.94 気分が沈み何もやる気がしない 57.0 27.4 1.83 極度に疲れやすい 56.6 27.7 1.85 日中に眠くなる 51.1 26.6 1.77 飲酒をやめられない 51.0 28.2 1.88 タバコをやめられない 46.6 29.3 1.96 とても太っている 40.2 28.9 1.93 体が極めて小さい 38.0 27.7 1.85 顔にあざがある 37.9 28.2 1.88 とてもやせている 33.5 26.9 1.80 髪の毛がない 31.4 28.3 1.89 ◆スライド10: 障害スコアの信頼性 データは高い信頼性を示唆(ぶれない) ・属性による下位集団と全体の障害スコアの相関係数 >【大なり】 0.95 ・ランダムに選んだ224人2組からそれぞれ障害スコアを計算 ⇒相関係数の期待値 = 0.994 ・誤差を除いて正しく測れている割合 級内相関係数 = 0.987 ◆スライド11: スコアの傾向 ・「機能制限」を伴う身体障害が上位 ⇒身体障害は不利という根強い評価 ・精神障害関連は中程度の評価 ⇒日常語と診断名の乖離? ・身体の異形は軽度と評価 ⇒人々の認識における周縁化とも 実際の排除と一致するとは限らない ⇒客観的方法や質的調査も必要 ◆スライド12: 文献 榊原賢二郎(2016)『社会的包摂と身体』生活書院。 星加良司(2007)『障害とは何か』生活書院。 横田弘(2015)「障害者はどのように生きたか」『障害者殺しの思想』増補新装版、現代書館、91-111。 UPIAS and DA(1976), Fundamental Principles of Disability, London: UPIAS and DA. 【以上】